トールキンの秘密を知る前に…「ロード・オブ・ザ・リング」三部作をイッキ見!


もし愛だけでトールキンという作家ができていたのなら、「ホビットの冒険」や「指輪物語」はもう少し明るいだけの作品になったはずだ。しかしそうはならなかった。なぜトールキンは、上に挙げたようなおぞましい描写を入れ込んだのか?その答えが、ここにある。


これから『ホビットの冒険』や『指輪物語』に代表されるJ・R・R・トールキンの中つ国(ミドルアース)の物語を「読んでみよう」と思われるかたに向けて、トールキンの世界を楽しむための手引き、読む順番の案内を、僭越ではありますが、わたしなりに書いてみようと思います。

しかし、12歳のときに母が亡くなり、トールキンと弟は教会の司祭を後見人に、ある婦人に孤児として引き取られる。そこで出会ったのが、運命の相手エディス(リリー・コリンズ)だ。共に孤独を抱えた2人は意気投合し、その絆は恋愛感情へと変わっていく。

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さらに、トールキンは生涯を通して固い友情を育む3人の学友と出会う。画家を目指す校長の息子ロバート・ギルソン(パトリック・ギブソン)、劇作家志望のジェフリー・スミス(アンソニー・ボイル)、作曲家の卵クリストファー・ワイズマン(トム・グリン=カーニー)だ。彼らと切磋琢磨するなかで、トールキンはぐんぐんと感性を育んでゆく。

『トールキン 旅のはじまり』は、第一次世界大戦の真っただ中、衰弱しきったトールキン(ニコラス・ホルト)が戦場で過去に思いを馳せるシーンから始まる。1892年にこの世に生を受けた彼は、教育熱心な母の影響で幼くして語学の才を開花させ、創作活動にも強く興味を抱くようになった。物語は序盤から、後の大作家のルーツを明かしていく。トールキンの作家としての基盤は、母の存在なくしては築かれなかったのだ。

特筆すべきは、本作は紛れもない伝記映画でありながら、極めて上質な青春映画の体を成しているということ。4人の若き芸術家たちが「クラブ」を結成し、青春を謳歌するさまは『シング・ストリート 未来へのうた』(16年)にも通じる爽快感を抱くことができ、大学入試に失敗したトールキンが21歳になるまでエディスとの交際を禁じられる展開は、まるで『ロミオとジュリエット』のようだ。

しかし、彼の小説や映像化作品は鑑賞していても、その人となりやどんな人生を歩んだのかを知っている人は少ない。トールキンはどんな人物だったのか?そして、「ホビットの冒険」や「指輪物語」はどのようにして生み出されたのか?それを解き明かすのが、映画『トールキン 旅のはじまり』だ。


『トールキン 旅のはじまり』特別映像(The Love Story)

世界中の老若男女に愛されているファンタジーの金字塔「指輪物語」。2001年にはピーター・ジャクソン監督によって『ロード・オブ・リング』として映画化され、3部作の完結編『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(03年)はアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む11部門を独占した(これは『ベン・ハー』と『タイタニック』に並ぶ史上最多タイの記録だ)。12~14年には前日譚となる『ホビット』3部作が公開され、今後はアマゾン・スタジオでドラマ化も進行中だ。

ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン

エディスと食事に出かけたトールキンは、彼女から言語表現における「美しさ」を学び、感銘を受ける。さらに、舞台の観劇がかなわなかった折のエディスのある行動を目の当たりにし、「運命の人」と強く意識するようになる。2人の恋愛を彩るシーンの数々は、「伝記映画の一部」と片付けてしまうにはあまりに美しく儚い。むしろ、本作の中核として存在感を放っている。

トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)

資料
トールキンをたのしむためのブックガイド / 髙橋勇 編

『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』三部作として映画化された、小説「指輪物語」と「ホビットの冒険」の作者、J.R.R・トールキン。

中つ国への第一歩は「まずはじめに原作を読み、映画を観る」。私のおすすめの順番は、これに尽きます。

J・R・R・トールキン | ロード・オブ・ザ・リング Wiki | Fandom

叙述から始めよ
テクストの中の「中つ国」――言の葉が織り紡ぐ再生の庭 / 桑木野幸司
もうひとつのフィクション性――「妖精物語について」における〈現実〉の位相 / 勝田悠紀
ファンタジーの魅惑――J・R・R・トールキン『妖精物語について』におけるフィクション理論 / 岡田進之介
トールキンと現代の神話――準創造という概念をめぐって / 石倉敏明
物語を受け継ぐ方法――「再創造」という創作・読解行為からみる、トールキン再読の可能性 / 渡邉裕子

【新刊】『J・R・R・トールキン 自筆画とともにたどるその生涯と作品』 トールキンに関する著作を(伝記、評伝、解説書など)網羅。

言葉は輪廻する
『ホビット』とともに歩んできた翻訳論 / 山本史郎
想像言語の比較研究ノート――あるいは母語からいかに飛翔するか / 小野文
トールキン・ルーン文字・JRPG / 小澤実

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの原作「指輪物語」や「ホビットの冒険」などの著者J・R・R・トールキンの半生に迫る人間ドラマ。

恋愛と双璧を成すのが、友情。同窓生のギルソン、スミス、ワイズマンは単なる親友ではなく、天涯孤独だったトールキンを「家族」として支える。トールキンが自分の夢を初めて打ち明ける相手が彼らなら、エディスを初めて紹介するのもこの3人。エディスとワイズマンが談笑する様子を見て、トールキンがやきもちを抱いてしまう姿が微笑ましく、エディスとの間にある事件が起こり、自暴自棄になってしまったトールキンをいさめるのもギルソン、スミス、ワイズマンの3人だ。生涯を通してトールキンの“心友”であり続けた彼らは、最重要なピースとして物語を豊かに彩る。

【指輪物語】モルドールの暗黒語で喋ってみた【トールキン】 [解説・講座] エルフ語文法解説動画が流行っていたので触発されて。

ロードオブザリングの作者だと知らないで鑑賞しました。
彼の波瀾万丈の人生。
作品の裏にあった事実を知ることができて、感動しまくり。
ホビットやロードオブザリングも再鑑賞してみたいぞ。

「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」神山健治監督に聞く

『人生はシネマティック!』(16年)やNetflixオリジナルシリーズ『The OA』(16~19年)で知られるギブソンはリーダー格のロバートをエネルギッシュに演じ、『ゲーム・オブ・スローンズ』(11~19年)のボイルは、一番近くでトールキンを見守るスミスを思慮深く表現。『ダンケルク』(17年)の好演が記憶に新しいカーニーは、トールキンが息子の名前にするほど慕っていたワイズマンを気品ある演技で体現している。

Tolkien,J.R. R. J.R.R.トールキン 〜 の在庫検索結果 / 日本の古本屋

創造のカレイドスコープ
トールキンと「ブリティッシュ」/「ケルティック」 / 辺見葉子
二〇世紀カトリック詩人としてのトールキン / 髙橋勇
英雄精神と〈騎士道〉――トールキンのべオルフトノスとガウェイン / 岡本広毅
リーズ大学のJ・R・R・トールキン / アラリック・ホール(訳=岡本広毅)

「指輪物語」のトールキンが自筆の絵で描いたファンタジー世界 ..

トールキン自身が劇的な人生を歩んだことも大きいのだが、この「ラブストーリー」と「友情ドラマ」の2つが、どこか固いイメージのある伝記映画の枠を取り去り、文学的な美しさを保ちつつも珠玉のエンターテインメントへと作品を昇華させた。

ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い | 109CINEMAS

テーブルを囲んで
中つ国を体験するTRPG――数値勝負から体験へ / 上田明
『一つの指輪:指輪物語RPG』リプレイ抜粋

ジョニー・デップ; ウィリアムシェイクスピア; J・R・R・トールキン; トム・ヒドルストン

遠く聞ゆるは懐かしき調べ
『ロード・オブ・ザ・リング――力の指輪』の詩的想像力とは / 伊藤尽
怪物とファンタジーの紡ぎ手たち――J・R・R・トールキンと「人種」をめぐる覚書 / 清水知子
イメージ・ファンタジー・労働の二層性――ラルフ・バクシとランキンバス社による『指輪物語』もののアニメーション / 宮本裕子
トールキンを読むシリコンバレー――カウンターカルチャー、シリコンバレー、『指輪物語』 / 木澤佐登志
ゲーム的ファンタジーとトールキーン世界 / 森瀬繚