イラストレーター中村佑介さんを変えた大きな“挫折” | 神戸新聞NEXT


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イラストレーター中村佑介が語る活動20年と今後 物語評論家さやわかと対談

中村佑介「絵を描きすぎて人間関係も希薄」20年間の仕事を網羅する展覧会レポート

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イラストレーター中村佑介が石黒正数、アジカン後藤正文ら盟友と共演

ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)」のCDジャケットや作家森見登美彦さんの書籍の装丁などで知られるイラストレーター中村佑介さんの活動20周年を記念した展覧会が、大阪・あべのハルカス24階にある大阪芸術大学スカイキャンパスで開かれている。名実ともに日本で最も活躍するイラストレーターのひとりである中村さんだが、東京オリンピック関連の仕事が全く「来なかった」ことに大きなショックを受けたという。「集団行動が苦手」という自身の半生や、デビュー以来変わらず続くアジカンとの“仕事”を超えた関係性、そして東京オリンピックに対する複雑な思いなどについて、飾らない言葉で語ってくれたインタビューをお届けする。

展覧会は、中村さんの20年にわたる仕事がほぼ全て一堂に会するという大規模な試み。完成イラストはもちろん、着色前の線画やアイデアスケッチ、学生時代の作品なども展示されており、中村さんが生み出してきた世界の魅力にどっぷり浸ることができる。

■「集団行動が苦手だった」

会場入り口の挨拶文で、中村さんは「教室にいる『みんな』という輪に入れなかった」「誰も話しかけてくれなかったらどうしようと恐れて成人式に行かなかったことを今も後悔している」と書いている。曰く、「あまり自分で意識していませんでしたが、こうして20年分集めてみて、ほとんどの絵の人物が一人でいるのは、僕のそんな人生を自分で肯定したかったからなのだと思います。でも描いても描いてもダメでした。自分を認めることはできませんでした」-。

まずはその真意についてうかがってみた。

「集団行動…例えば修学旅行や体育祭、音楽会みたいな『人と一緒に何かをやる』のが昔から本当に苦手で。クラスの文集を作るときなんかも、僕はみんなの似顔絵を描くからほっといてくれ、という感じでした。大学(大阪芸大)でもそうでしたね。みんなが遊んでいる間も、1人でずっと絵の勉強をしていました。だから正直、自分がプロになれることはわかっていたんですよ。だって人間関係を棒に振ってまで、人生の全てをイラストに費やしてきたわけですから」

「そんな風に、みんなが集まって楽しそうにしていることをある意味で否定するために絵を描いてきました。そしたら、間違いなく声が掛かるだろうと思っていたオリンピックの仕事が1件も来なかった。画集が売れていて(累計13万部)、知名度もある。正直、今の日本で代表的なイラストレーターといえば僕の名前が挙がると思うんです。でも、自分の協調性のなさみたいなものが足枷となり、人と何かを“共有”する喜びみたいなものを描けていなかったという課題に気づかされました。すごく落胆しましたが、『私に構わないでくれ』みたいに横を向いた人間が1人だけ描かれているような僕の絵は、そりゃオリンピックにふさわしくないよな、と納得もしました」

オリンピックが大嫌いで、これまで自発的に見たことがなかったという中村さん。「1人で自分の世界を追求する」という自身の作風には限界があると感じるようになり、以来、絵の躍動感や、「みんなが思う協調性や喜び」を意識して表現に取り入れるようになったという。すると2022年の大阪国際女子マラソンの仕事が舞い込んだ。

「ああ、やっぱりそういうことかと。もう少し早く気づけていれば、ここからオリンピックにもつながっていたはずなのに。でも、もうおそらく僕が生きている間に日本でオリンピックはないでしょう。成人式だけじゃない。人生全部、後悔だらけです(笑)」

「僕はイラストレーターとしては“エリート”ですが、人間としては全然ダメで。人から嫌われることなんて心からどうでもいいと思っていて、44歳になった今もその場の空気が悪くなることを平気で言ってしまう。マインドが小学校3、4年くらいで止まっているんですね。僕の作品の魅力って、そういう子供みたいな感性と、脇目も振らず黙々と積み重ねてきた高いイラスト技術のアンバランスさだと思うんです。だから、人間として成長すると、逆に絵が面白くなくなるかもしれない。でもオリンピックの仕事が来なかったことで、せめて人を嫌な気分にさせないくらいには成長したいと思うようになりました。僕という人間は多分、88歳くらいでようやく完成するような気がしています」

■トレパク問題に意見を表明する理由

この「作品が愛されてさえいれば嫌われても構わない」「空気を読まず、言いたいことを言う」という“中村佑介らしさ”が垣間見られるのが、イラスト業界を度々騒がせる盗作やパロディ問題に対するSNSなどでの発信だ。中村さんは、こうした問題にプロのクリエイターとしてストレートに意見を表明する、ほとんど例外的な存在と言える。

「他のイラストレーターがトレパク(トレース、パクリ)を表立って指摘できないのは、クライアントとの関係性があるからです。イラストレーターの仕事はクライアントとの結びつきでできているので、トレパクをしたイラストレーターを非難したら、そのクライアントまで非難することになってしまう。怖いんですよ。だから、トレパクがなぜ良くないのかを正面から説明できないんです」

「でも僕の場合、クライアントにとって『中村佑介を使わない』という手はありませんから。人並みの人生を棒に振ってまでイラストに賭けてきた僕の作品が、それだけ求められているという自負もあります。だから僕はしがらみを気にせず発言できるんです。でも、さっきも言ったように、オリンピックでの“挫折”を機に人間として成長したい、生活者としての人生をもっと大切にしたいという気持ちが大きくなってきました。今後はこれまでのように発言しなくなっていくかもしれませんよ。『え、そんな騒動があったの?』なんてとぼけたりして。いやいや、冗談です(笑)」

■アジカンのジャケットは「仕事」ではない

2002年にインディーズから発売(後にメジャーで再発)された初の正式音源「崩壊アンプリファー」から続くアジカンとの他に類を見ない関係性も、中村さんのキャリアを語る上で欠かすことはできない。最初はアジカンが20人ほどの客前でプレイしていた時代に、神戸のライブハウスでファンから中村さんのポストカードを渡されたボーカル・ギターの後藤正文さん(ゴッチ)がその絵を気に入り、ジャケットを依頼したのが始まりという。

「『続ける』っていうのは実はとても難しいことです。CDジャケットで1人のイラストレーターを使い続けるなんて、特にそう。僕の絵って大体記号が決まっていて、こういう方法を採れば“中村佑介風”に描ける、みたいなノウハウもあるくらい固定されたもの。客層はどうしたって狭まってしまいますよね。でもやっぱり続けること自体を僕が面白いと感じているのと、あとアジカンは真面目なバンドですから。僕を使うことにメリットがあるんだったら、彼らに協力したいという思いは持っています」

「ゴッチがファーストインプレッションで僕の絵を気に入ってくれたのは本当だと思うんですが、それ以降はおそらく、『続けていく』という関係性を育んでいくことに軸足を置いているんじゃないでしょうか。アジカンが1度も解散せず、ずっと同じバンドメンバーでやっているというのも、そういう覚悟の表れだと思うんです」

「ただ、アジカンにとって僕を使うことのデメリットが大きくなったときは、やめた方がいいんじゃないかと思っていて、4thアルバム『ワールド ワールド ワールド』(2008年)のときに実際そう提案しました。彼らがコアな音楽ファンからなかなか受け入れられなかったのは、僕のジャケットのイメージも原因ではないかと責任の一端を感じていましたから。でも、アジカンはまた次も依頼してくれました。だから僕も『そこまで求めてくれるのなら、このまま心中しようか』と(笑)。アジカンとの仕事は、僕にとってはもう“仕事”という認識ではないですね。頼んでくれる限りは、これからも描き続けます」

■「流行」で終わらないために

最後に、20年間で仕事に対する姿勢や意識にどんな変化があったのかを尋ねてみた。

「10年目くらいから、より幅広い層に作品が届くよう、簡単な色、誰の家にでもあるようなありふれたモチーフを使うようになりました。若い感性で、若い人向けにオシャレな絵を描くのって、意外と容易いことなんです。何故なら自分の感性がそこと同期しているから。イラストレーターの寿命って本当に短くて、5年、10年しかないんですよ。大半は、その人が若いときだけのお客さんにしか受けません。ファッションと同じで、イラストも若い人にコミットすればするほど、流行が過ぎると次の世代にとってはダサいものになってしまいます」

「僕はそうならないように、ずっと気をつけてきました。僕の絵は2000年代にめっちゃ流行ったので、このままだと次の時代が来たら一番ダサい絵柄のヤツになるぞ、絶対そうならへんぞ、という危機感はかなり強かったです。普段は大阪に住んでいるから東京の関係者とコネもつくれないし、そのくせ飲み会も全然行かないし。だからこそ、いつの時代に見ても古さを感じさせないというか、素敵だなと思ってもらえるような、“外面”だけではない絵の普遍的な面白さや感情をきちんと打ち出していく…そういうことを意識して描いてきたつもりです」

「20年前に仕事を始めた頃には考えられなかったことですが、さだまさしさんのCDジャケットや浅田飴のイラストなども担当させていただけるようになりました。それも、僕が獲得してきた強みが実を結んだ結果と言えるかもしれません」

中村さんは挨拶文でこうも書いている。

「しかしずっと目を逸らしていた横顔の少女がふと額縁の外に目をやると、そこにはずっと応援してくださった方たちがいたことに気付きます」「20周年展。これが僕の成人式なのですね。ご参列の皆さま、ほんとうにありがとうございます。これからは後ろ髪をひかれることなく、もっと幅広い絵を描き、みんなにお返ししたい所存です」

◇ ◇

中村佑介展は9月25日まで(月曜休館)。11時から19時。チケットは一般1000円、大学・専門学校生800円、中高生600円、小学生以下無料。グッズ付きチケット(一般1300円など)もある。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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中村 佑介(なかむら ゆうすけ、1978年1月26日 - )は、日本のイラストレーター・漫画家・音楽家。兵庫県宝塚市出身、大阪府在住。

1978年生まれ、兵庫県出身のイラストレーター。大阪芸術大学デザイン学科卒業。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットをはじめ、『謎解きはディナーのあとで』、『夜は短し歩けよ乙女』、音楽の教科書など数多くの書籍カバーを手掛ける。画集『Blue』と『NOW』は13万部を記録中。

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「ラジオは、そのタレントさんの別の一面が見えるから皆が好きなわけであって、似顔絵を描く仕事じゃないと思うんです。タレントの別の顔を描くには、番組を聴かないと見えてこない。元々ラジオは好きですが、仕事なのでメモを取りながら、真剣に聴きました。そうするとコーナーの意図、ハガキ職人のこと、その空気感がだんだんと分かってくる。ものすごく時間はかかりましたけれど」

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グラニフ公式オンラインストアでは、2023年8月23日(水)0:00から2023年9月4日(月)23:59までの期間、予約販売の受付を実施。期間中にご予約いただくと、グラニフメンバーシッププログラムのポイントが2倍となるほか、ご予約いただいたかたの中から抽選で50名様に、中村佑介氏の直筆サイン入りのポスターをプレゼント!

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仕事を「印刷物が本物になるのがイラストレーターだと思います。美術の名画のように、原画を見ることでマウントをとれる世界に、僕はいたくない。あの子も持っている、僕も持っていると、満足感を得られるのが印刷物の最も優しい部分だと思います。どの地域にいても安価に手に入れられますし」と語った。作画に取り組む前の準備を大切にする。著書を含めてさだまさしの全作品を集め、赤川次郎作品も可能な限り読破した。ラジオ「オールナイトニッポン」の全パーソナリティーを描く仕事では月~土曜日、半年分の番組音源を取り寄せた。

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ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットをはじめ、『夜は短し歩けよ乙女』、音楽の教科書など数多くの書籍カバーや、アニメ『四畳半神話大系』のキャラクターデザインなどを手掛けるイラストレーター中村佑介。これまでのアートワークの中からグラニフとのコラボレーションアイテム第3弾が登場!

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株式会社グラニフ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:村田 昭彦、以下グラニフ)は、2023年9月5日(火)より、イラストレーター「中村佑介」コラボレーションアイテムを、グラニフ公式オンラインストアならびに国内店舗にて販売開始いたします。

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グラニフ×中村佑介 第4弾コラボレーションコレクション
発売日:2024年10月29日(火)
取扱店舗:グラニフ国内店舗、グラニフ公式オンラインストア

イラストレーター中村佑介の展覧会「中村佑介展」が、池袋パルコ 本館M2F 特設会場にて、4月20日(金)~5月21日(月)に開催される。

このほか、中村佑介がグラニフをイメージして描き下ろした作品とブランドロゴをデザインしたスウェットやリバーシブル仕様のダウンマフラー、森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」の文庫版カバーイラストをで表現したソックスなど、全20種類のアイテムが用意されている。

中村佑介 カレンダー2025 (@kazekissa) / X

ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケット、森見登美彦、赤川次郎の書籍カバー、音楽の教科書表紙、浅田飴のパッケージなどで知られるイラストレーター、中村佑介さん(44)の個展「中村佑介 20周年展」が9日、東京・水道橋のギャラリー・アーモで開幕した。中村さんは「僕はもう時代遅れ」と評し、「それはとてもいいこと」と語った。

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