日銀追加利上げ観測で進む円高と円高に連動した株価の急落|2024年
さて、日銀はどうだろうか。衆議院選挙で与党が敗北して、筆者は日銀の年内利下げはないと思った。しかし、ここにきて12月利上げの公算は高まっている。来夏に参議院選挙を控えた石破政権は、物価上昇の再加速を快くは思わないだろう。秋の経済対策の吟味も行われている。日銀は、クリスマス商戦を念頭に置き、「米国経済の見極め」を行うつもりだ。このアナウンスは、2024年12月か、2025年1月のいずれかに利上げをする意向を示すものだ。それに対して、足元の円安進行は12月利上げの可能性を高めるものだろう。近々、財務官や植田総裁から円安への口先介入が行われるだろう。そうした展開になれば、12月利上げは近いというシグナルだと考えられる。
今後の円安進行で気になるのは、日本の通貨当局が為替介入に打って出るかという論点だ。2024年4月29日・5月1日には介入を実施している。為替相場が連休前に1ドル153~155円で膠着していたところから、一気に156~157円に円安が進んだところで、頭を押さえるように9.8兆円の為替介入が行われた。このときは随分と投機色が強かった。現在は、シカゴのIMM通貨ポジションは、以前よりも円売り方向になってきたが、4・5月ほどは投機筋の円売りポジションが膨らんでいない。だから、今のところ実勢を反映した円安に見えるが、円安の勢いが強いと介入の可能性は高まっていく。
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【楽天証券】12/13「 「日銀、利上げやめるってよ」 ドル/円155円目指し上昇中」FXマーケットライブ
筆者が少し不思議に思うのは、米株価が大きくは下がらないことだ。株価はこれまでFRBの利下げ予想を織り込んで上がってきた。ならば、トランプ当選で金融緩和期待は剥落しているのに、なぜ株価は大幅に下がらないのか。これも、ドル高と同じく、潜在的なトランプ・トレードの押し上げ圧力が見た目以上に強いことを示唆している。
長短金利をみてみると、11月の利下げ後のFFレートの誘導目標は、4.5~4.75%である。長期金利は4.4%台まで上がっていて、これはほぼ同水準だ。ここには短期金利の見通しの変化が背景にあるのだろう。今後は、短期金利があまり下がっていかないだろうという予想なのだ。従来の短期金利>長期金利の図式、つまり長短金利の逆転が続いてきた。しかし、それは解消する手前までやってきている(図表2)。FRBは、9月時点で2025年中▲1.00%ポイントの追加利下げを予告しているが、長期金利はその利下げをあまりカウントしていない水準で推移している。これは、潜在的なインフレ圧力を見込んでいるということだ。そして、FRBがどこかで利下げを休止して、いずれ利上げ方向に転じてもおかしくはないことを見込んでいるのだろう。米金利のイールドカーブは、1~3年にかけて4.2~4.3%程度になっている。
しかし、トランプ氏に対して、政府・日銀が為替介入を実施することはあまり見栄えがよくない。ドル売りだからよいではないかという意見もあろう。それでも、為替操作をすること自体が火種になる可能性があるので、筆者は口先介入は行われても、結局、通貨当局は実弾を撃たずに済ませるとみる。むしろ、動くのは日銀の方だろう。
ドル円レートは、1ドル156円台までドル高が進んだ(図表1)。11月5日の選挙でトランプ氏が次期大統領に決まり、ここにきて上下院ともに共和党が過半数を占めることが確実になったからだ。下院でねじれがあれば、法案修正の圧力がかかるが、トリプルレッドが確実になったので、そうした圧力を受けずにトランプ政策が通りやすくなった。それは間接的に財政赤字要因になるので、米長期金利が上昇した。これはドル高要因だ。
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2006年7月にゼロ金利を解除し、2007年2月に再利上げを行って日銀は政策金利を0.5%まで引き上げた。ただそれでも当時の米ドル高・円安トレンドは変わらず、結果的には2007年6月まで続くところとなった。
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その後、5月2~3日のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)で利上げ停止が示唆され、5月4日のECB(欧州中央銀行)政策理事会でも利上げ幅の縮小が決定されるなど、欧米中銀のハト派傾斜が顕著になったものの、ドル円相場の下落は限定的で、134~135円付近で推移している。
円高圧力強まるか FOMCで利下げ決定へ 日米金利差は縮小見通し
植田日銀の初会合を経て、円金利の低位安定が確認された後、ドル円相場は137.50円付近と年初来高値を断続的に更新した。
日銀、円安対応で利上げも 米国にインフレ再燃懸念―トランプ氏勝利
年末年始時点では「年央にかけてFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が利上げを停止する。これに伴って日米金利差も縮小し、ドル円相場も反転する」という金利動向を主軸とする円高予想が支配的だった。各種の関連記事をさかのぼれば「3月、遅くとも5月の米利上げ停止を受けて円安相場は反転する」というストーリーラインは非常に多かったと記憶する。
米大統領選で、大規模減税など景気刺激策を掲げたトランプ前大統領が勝勢となり、6日の東京外国為替市場の円相場は対ドルで急落した。
この点は、今回はこれまでの日銀「利上げ」局面とは大きく異なっており、米ドル/円は2000年以降では最も米ドル高・円安圏での推移となっている。その意味では、マイナス金利解除で円高への反応は限られるとしても、逆にさらなる円安のきっかけになるということではないだろう。
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もう1つ、これは2000年8月のゼロ金利解除のケースに該当しそうだが、根強い「円高恐怖症」により、日銀の「利上げ」でも円高にならないほど円安地合いが定着することを待つ影響はあったのではないか。この時の日銀内には、実際には1年程早くゼロ金利解除を行いたい考え方もあったが、1米ドル=100円割れ近くまで米ドル安・円高が進む中で、さらなる円高をもたらしかねない「利上げ」を先送りした可能性があった。
[PDF] FRB 利下げ転換後のドルサイクルとドル円相場の行方
米ドル安・円高へ転換したのは、すでに2006年6月で利上げが終わっていた米国が、2007年9月から利下げへ転換したことが大きな要因となった。今回の場合も、米国はすでに2023年7月が「最後の利上げ」だった可能性が高い。日銀のマイナス金利解除より、米国の「最初の利下げ」に現実味が出てきた時が米ドル安・円高に大きく動き出す目安になるのではないか。
➢ もっとも、2022 年以降の FRB によるインフレ率抑制を優先した急激な利上げの影
それにしても、なぜ日銀「利上げ」は今回も含めて日米金利差が大幅に開いている中で行われるのか。その理由の1つは、デフレからの脱却などの日銀の「利上げ」条件のクリアには、日本国内の景気だけではなく、世界景気の拡大が必要であり、その中で米国は大幅な金利引き上げに動くためだろう。2000年8月、そして2006年7月の2度の日銀ゼロ金利解除の前までに、米国の政策金利であるFFレートは5~6%以上に引き上げられていた。
米利下げは概ね織り込み済。米金利の低下余地は限られ、ドル円は下げ渋りへ
足元の日米政策金利差米ドル優位も5%以上の大幅なものとなっている。その意味では、マイナス金利解除でも過去3回の「利上げ」と同様に、円金利の小幅な上昇による米ドル/円への影響は限られるのではないか。
株価急落の悲劇と望まぬ形で進む円安是正の衝撃 決して日銀の利上げがその始まりではない ..
確かに、そうした市場の読み通り、3月以降の日米金利差は2年・10年ともに顕著な縮小傾向が認められる。しかし、ドル円相場は逆に上昇基調にあるように見える。これをどう解釈すべきか。
19日の円相場は一時1ドル157円台まで下落した。植田総裁は賃金と物価の好循環が重要との認識を示し、慎重な姿勢を維持している。利上げ ..
この3度の「利上げ」は、基本的に日米の政策金利差米ドル優位が5%以上と大きく開く中で行われたものだった。その意味では、大幅な金利差米ドル優位の中での日銀「利上げ」に伴う小幅な円金利上昇が米ドル安・円高をもたらす影響は限られたということではないか。
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日銀は2000年以降ではこれまで3度の「利上げ」を行った。2000年8月11日と2006年7月14日のゼロ金利解除、そして2007年2月21日の再利上げだ。この3回の「利上げ」では、一時的に数円程度の円高はあったものの、基本的には米ドル高・円安トレンドを変えるものにはならなかった(図表参照)。
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