ついにドル/円は基調転換のときを迎えたか? 2012年2月15日


2022年になって急激に対ドルで円安が進み、ドル円の為替レートはどこまで行くのかと気をもんでいる人は多いだろう。過去を振り返ると、為替レートは上下どちらにも大きく変動しており、その程度も、期間もさまざまだった。今回、2022年3月頃に端を発する円安がどこまで進むのか確実に予想する方法はないが、過去にどのようなドル円の動きがあり、その背景には何があったのか見てみることは、決して無駄にはならないだろう。


第2次世界大戦後のブレトンウッズ体制においては、当時は唯一の安定通貨であった米ドルを基軸通貨とする「固定相場制」が敷かれていた。例えば日本円の場合、1ドル=360円といったように為替相場が固定されていたのである。

今回も前回(2011年11月30日更新分)と同様、豪/ドル円のチャートをもとに相場分析・予測の方法について検証を重ねて行きたいと思います。果...

(備考) 対ドル名目為替レートはインターバンク直物中心相場(月中平均 ..

しかし、1960年代にベトナム戦争などの影響もあって米国経済が悪化すると、米ドルの信用力も低下し、固定相場制を維持することが難しくなっていった。1971年にはドルを切り下げる形で1ドル=308円の固定相場制となったが、その後もドル安の流れは変わらず、1973年には日本や欧州各国は完全な「変動相場制」へと移行することとなった。

同年3月の東日本大震災後、日本は甚大な被害に見舞われたにもかかわらず、円高が進んだ。経済的な影響が大きければ円安に動いてもおかしくないが、当時は、日本の保険会社が保険金の支払いに手元の円を増やすため、海外の資産を売って円買いを進めるのではないかという思惑もあり、円高につながった。10月には1ドル=75円32銭の戦後最高値に達した。

1995年以降、これまでに最も円安となったのは1998年7月で、当時は1ドル=144円63銭まで急落した。わずか3年前の1995年に、ドル円は80円を割るほど円高となっていたため、その揺り戻しが大きく出たと見ることができるだろう。当時、日本では大手金融機関が相次いで破綻しており、日本経済の先行きへの不安が大きくなっていた時期。日本政府は2兆円以上の円買い・ドル売りの市場介入も行って、何とか円安を抑え込んだのだった。

その後も2度ほど円安になる局面はあったが、2022年の円安と背景が近い“2015年の円安”は興味深いだろう。2012年には70~80円台だったドル円相場が、2015年6月は125円86銭まで円安に振れた。米国では2015年12月に9年半ぶりとなる利上げが行われ、その後2018年12月まで断続的に利上げは続いた。一方、日本はその間、黒田日銀総裁が「異次元緩和」と称して強力に金融緩和を押し進めた。こうした金融政策の違いが強烈な円安につながったと考えられる。


米ドル対円相場(仲値)、ユーロ対円相場(仲値)を年度ごとに見ることができます。 米ドル対円相場(仲値)一覧表

円が20日、1ドル=150円まで下落した。東日本大震災後の2011年10月につけた1ドル=75円32銭の戦後最高値から半値になった。この11年で日本経済はどう変わったのか。

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過去、最も円高となったのは、2011年10月末の1ドル=75円32銭だ。欧州債務問題やリーマンショックの後遺症で欧米経済が苦しい中、2011年3月には東日本大震災があった。リスクを避けたいマネーが円に流れ込み、いわゆる「有事の円買い」が円を押し上げた。

「円高時代」が終わり、「円安時代」に変わった節目は2012年末と言えるだろう。

依然としてユーロには強い下押し圧力がかかっています。前回の本欄(2012年1月4日更新分)でも述べた通り、この1-3月期は欧州問題が「混乱の...

下記の図表は、円ドル・円ユーロ相場の推移である。2011年を振り返れば、日本は円高で明け暮れた

しかし、2022年の円安では、ロシアのウクライナ侵攻という「有事」にもかかわらず円高となっていない。なぜだろうか。理由は1つではないだろうが、大きな要因として考えられるのが、日本の製造業による海外への直接投資が進んだことだろう。

またドル円相場について、リーマンショック後 2012 年暮れまで円高基調が継続した

以前は何か有事があると、日本の製造業が海外にため込んだ利益を慌てて日本に戻すため、ドルを売って円を買う動きが活発化して円高となった。しかし今では、日本の企業も海外に工場を持ち、人を雇い、稼いだドルは現地で使うことが増えている。このため、有事であっても日本に戻すお金は少なくなっていると考えられるのだ。

楽天Kobo電子書籍ストア: 1ドル50円時代を生き抜く日本経済

現在の外国為替市場において「ユーロが主役」であることは言うまでもありません。その結果、対ユーロでドルと円が同じ動きをすることが多いため、長ら...

2012年、日本株「意外高」の円安シナリオ 編集委員 北沢千秋

そのようななか、人工知能(AI)を用いたドル円レート予測手法が注目を集めている。AIは膨大な過去データや経済指標、ニュース情報などを学習し、それらの複雑な相関関係を見出すことで予測精度を高めている。また、AIによる予測は、人間の感情に左右されることなく客観的かつ迅速に行われるため、市場参加者の意思決定をサポートする有力なツールとして期待が高まっている。一方で、その仕組みは非常に複雑であるため、予測結果の解釈や活用については確立されていない部分も多い。さらに、AIによる予測は過去のデータにもとづいているため、予期せぬイベントや市場の変化に対応することが難しいという指摘もある。

年ぶりに1ドル = 124円台を記録した。円が実体経済以上に安くなったことから ..

前回(2012年2月1日更新分)の本欄では、当面のユーロ/ドルの戻りメドについて触れ、それは一つに「2010年8月以降に形成されていたと考え...

円相場の変動率は2012年末頃から2013年前半にかけて著しく高

まず、「過去のレートの分析」工程で、ドル円レートの1996年以降のデータをAIに読み込ませ「1996年からの直近のドル円レートを分析してください」と指示したところ、AIはその週次データを解析したうえで、「長期的なレンジ相場」「1998年から2012年にかけての円高トレンド」「2012年以降の円安トレンド」「新型コロナショック後の急激な変動」「直近の動向」という5つの特徴について、以下の通り洞察した(図表1)。すなわち、「過去28年間、ドル円レートは80円から150円のレンジ内で推移しているが、1998年から2012年にかけての円高トレンドに続き、2012年以降は日銀の金融緩和政策や米国の金利上昇を背景に円安トレンドに転じた。2020年の新型コロナショックでは一時的に円高が進行したが、その後はドル高・円安方向に振れた。2023年に入ってからは127円から153円の範囲で推移し、米国の利上げペース鈍化観測から上値の重い展開となっている。今後の動向は日米の金融政策の違いやグローバルな経済情勢に左右される」というものである。

円相場は3日午後5時現在、1ドル82円30銭から31銭での取引。

さらに、リアルタイムデータの取り込みや高速処理により、AIは人間よりも迅速に判断・予測することができる。急速に変化する市場環境において、素早い意思決定を可能にすることに加え、人間の感情や先入観に左右されることがないため、AIはより客観的で公平な判断ができる。これらの利点を活かすことで、AIによるドル円レート予測は、投資家の意思決定をサポートする強力なツールとなり得る。